違反すると罰金・懲役の恐れ…働き方改革法で刑事罰の対象となる条項は?

2020.02.19

2019年4月に働き方改革が施行され、まずは大企業に対して導入されました。

そして2020年4月からは、猶予期間を設けていた中小企業に対しても、いよいよ導入されることとなりました。

この働き方改革は、社内の規則変更を促すのではなく、遵守しなければ刑事罰が科せられる強制力を持つ「法律」であることを、忘れてはいけません。

しかし、実際には「どの条項から対応すればよいのかわからない」や「どの条項を守らなければ刑事罰にあたるのか」と対応に困る会社も多いと思います。

今回の記事では、対象となってしまう法改正の条項と、罰則内容についてご紹介いたします。

働き方改革で刑事罰のある条項

・時間外労働の上限規制と罰則の内容
働き方改革法以前は、「36協定の上限規制」として「月45時間、年360時間」として時間外労働の規制を設定していました。

しかし、臨時的な特別な事情がある場合、6か月を超えない範囲であれば、「36協定の上限規制」を超えることができる「特別条項」を定めることが可能でした。

この際、刑事罰ではなく、大臣告示による行政指導を受けるのみだったので、実質無制限に許容されていたかのように、会社は受け止めている傾向にありました。

しかし、働き方改革法施行により、この特別条項は制限を設けることになりました。

設けられた上限は
・原則「月45時間、年360時間」であること(=1日残業2時間程度)
・年間の時間外労働が720時間以内であること
・時間外労働の合計が月100時間未満であること(休日労働を含む)
・時間外労働の合計は「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月あたり80時間以内であること(=1日残業4時間程度)(休日労働を含む)
・原則にある月45時間を超える時間外労働ができるのは年間6か月まで

これらの「時間外労働上限規制」に違反した会社には「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科せられることが定められました。

・年次有給休暇の取得義務と罰則の内容
年次有給休暇を取得する時期は、原則として労働者が決めます。

しかし、使用者は法で定められた年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対して、毎年最低5日の有給休暇を取得させなければなりません。

この有給休暇取得義務化を違反した場合「30万円以下の罰金」という罰則が科せられることが定められました。

・高度プロフェッショナル制度対象者への医師の面接指導

高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識を持ち、業務内容の範囲が明らかであり、年収1075万以上を満たす労働者に対し、本人および労使委員会の決議により、労働時間や休憩、休日および深夜の割増賃金の支払規定を適用しない制度をいいます。

この高度プロフェッショナル制度に対する罰則はありませんが、この対象となる労働者に対して、使用者は長時間の労働によって、健康被害をおこさないよう、医師の面接指導を受けさせる義務があります。

面接指導を行わなかった場合、「50万円以下の罰金」の罰則が科せられることが定められました。

罰則はないが注意すべき条項

・同一労働・同一賃金
非正規雇用労働者の増加に伴い、正規雇用労働者と同程度の業務や責任を負う非正規雇用労働者に対して、労働価値が同一であるなら、公平な賃金を与えるべきだということが義務化されました。

使用者は労働者の待遇差について明確にする必要があり、説明する義務があります。

しかし、待遇差が合理的ではないと示された場合や、説明義務や規定を明確にしなかった場合、刑事罰の対象にはなりませんが、使用者側に対し裁判で損害賠償請求をされる可能性があります。

働き方改革法施行により、多くの社内規定が変わり、会社は各変更規定に対して、まず何から対応しなければならないのか、悩んでしまうこともあると思います。

優先順位をつけるなら、違反をすると刑事罰の対象となるものから順に対応していきましょう。

働き方改革法改正となった条項の多くは、労働者の健康や命を脅かす過重労働に対するものです。

刑事罰を受けさせられるから、ではなく、労働者が末永く健康に会社で勤務してもらうためにも、必ず遵守しましょう。

(画像はPixabayより)

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高野勤一
高野勤一