働き方改革でストレス増大?管理職に負担が

2019.05.23

働き方改革に取り組む会社に勤める人の4割がストレス増大―。先日、ちょっと衝撃的な調査結果が発表されました。

チューリッヒ生命が4月4日と5日、働く男女1000人にインターネットアンケートを実施した結果です。しかし労働環境をよくするための働き方改革なのに、4割の人がかえってストレスを増やすなんて、いったいどういうことなんでしょう。

その背景を探ってみます。

ストレスを訴える50代管理職

この調査は働く人のストレスについてのもので、2年前から年1回行われています。今年の調査では、「勤め先でストレスを感じている人」が76.1%となり3年間で最も高くなりました。

働き方改革をすすめ、国を挙げて長時間労働の削減や休日確保に取り組んでいるのに、ストレスを感じている人が増えているというのはショックです。

しかも、働き方改革を進めている会社でストレスが増えているとなっては、「働き方改革って大丈夫なの」と言いたくなります。どのような点でストレスを感じているのでしょう。

調査では、働き方改革のストレスの変化について、年代別男女別で分析をしています。それによると、ストレスが増えたと感じているのは、30代男女と50代女性。一方で、20代女性と40代女性で「ストレスが減った」という人の割合が多いのが目を引きます。

なんだか、若手は余暇が増えたのを喜び、40代女性も子育てと仕事の両立がしやすくなる一方で、そのしわ寄せが30代と50代に偏って仕事に追われているというイメージが湧いてきます。そんなことがなければいいのですが。

もう一つ気になるのが、50代の人たちの4割がストレスの要因として「勤務管理・業務管理が厳しくなった」と感じていることです。

50代といえば、管理職の多い世代。管理職が部下を休ませるために、自分はサービス残業をしているということはないのでしょうか。少し心配です。

管理職の労働時間把握も必要に

これまで日本の会社の経営では、管理職は労使関係でいくと経営側の社員で、また、管理職手当をもらうことで残業をしても時間外手当が支払われないという運用がなされてきました。

これによって、肩書きがつくだけで実際にはほとんど裁量もないのに「管理職」扱いをされる「名ばかり管理職」という問題も起きています。

そこで働き方改革の中では、一般社員に加え、管理職に対しても労働時間の把握を行うことが義務づけられました。

ただ、どうしても自己申告になってしまう職場もあるでしょうから、その場合は、パソコンの使用時間や入退場記録などを申告と付き合わせて記録と実態に乖離(かいり)がないかを調査をしなければなりません。

もちろん、本人が正しく申告できるような配慮や指導、環境整備も必要です。

要するに、これまで通り管理職には時間外労働などの手当を支払う必要はありませんが、だからといって労働時間の把握を怠ってはならないということです。

これは、長時間労働の規制や休日確保の義務化などによって、そのしわ寄せが管理職にいかないようにする措置なのです。

まとめ:実態のともなう改革を

「働き方改革」とは文字通り改革ですから、「残業禁止」や「休日取得」などと号令をかけるだけでは意味がありません。業務の内容や進め方を見直し、効率化を図る必要があるのです。ましてや、管理職にしわ寄せがいくようなことがあってはいけません。

改革を始めるには、いろいろな変化がともないますから、今回の調査はそうした変化に対応するためのストレスが一時的に増加しただけなのかもしれません。

しかしそうであっても、働き方改革を進めるには、管理職の労働時間や働き方もしっかり把握し、過度の負担がかかっていないかを確認する必要があるでしょう。それによって、実態のともなう改革が進むのです

(画像は写真ACより)

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高野勤一
高野勤一