経団連、同一労働同一賃金の実現に向けて提言を発表

2016.07.23
欧州型は困難!?日本型の新制度を!

平成28年7月19日、一般社団法人日本経済団体連合会(以下「経団連」)は「同一労働同一賃金の実現に向けて」と題した提言を発表した。

その中で経団連は、日欧の雇用慣行や人事賃金制度の相違などから「欧州型同一労働同一賃金は困難」としており、政府が司法判断の根拠規定となる法整備をけん制する狙いが透けてみえる。

提言は、経団連が仕事内容が同じなら、正規・非正規に関係なく賃金格差をつけない「同一労働同一賃金」制度導入をにらんだもので、新制度について「わが国の雇用慣行に留意した仕組みを目指す」としたのが特徴。

すでに制度を導入している欧州各国では、産業別労使関係が基本であり、正規従業員・非正規従業員を問わず産業別労働協約で職種・技能グレードに応じた賃金率を決定される「職務給」制度が定着している。

対して、日本では企業内労使関係が基本であり、企業によって賃金制度の内容が多様であり、経験や仕事をこなす能力などを重視する「職能給」が主で、正社員の仕事範囲が明確に定められていないケースが殆ど。

実際に同一労働か否かを判断する際には、職務内容に加えて、勤務地や職種の変更の可能性といった「様々な要素を総合的に勘案する」必要があるとの見解を示した。

こうした違いを踏まえ、経団連は同一労働同一賃金の実現に向けた検討に当たっては、雇用慣行を含む経済社会基盤との整合性を考慮し、日本に適した仕組みの構築が重要であるとしており、欧州型とは異なる日本型の制度の導入を求めている。

政府の動きに早急な対応を迫られた経団連

一方、政府は、今年6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」で、非正規雇用の待遇改善策として同一労働同一賃金の実現を目玉の一つ添えている。

第24回参議院選挙においても、与野党が共に導入を公約に掲げており、政府は年内に、雇用形態の差違(正規と非正規)による不合理な待遇格差の事例を示したガイドラインを策定する方針。

このガイドラインについて提言は、個別労使が明らかに不合理と認識できる取扱いや改善が求められる取扱いを例示することを求め、限定するべきであると注文している。

経済界には、人件費や労働紛争の増加などにつながるのではないかという危惧があり、同一労働同一賃金制度導入への根強い懸念があるという。

▼外部リンク

日本経済団体連合会 
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/053.html

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月山哲也
月山哲也