準委任契約の建築士に過労死認定!「実質的に労働者」と賠償命令
2016.09.21
平成28年9月15日、東京都内の準大手ゼネコンである戸田建設で働き、長年施工図作製を任されていた栃木県内の1級建築士の男性(当時47歳)が平成16年に職場で死亡したのは、業務による過重労働が原因であるとして、遺族が会社に計約8,460万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、宇都宮地方裁判所であった。
吉田尚弘裁判長は原告側の主張を認め、雇用契約を結んでいなかった男性を「(実質的に使用される)労働者だった」と認め、同社に対して約5140万円の支払いを命じた。
遺族側の代理人である高橋信正弁護士は、今回の判決を「雇用契約以外の労働実態に過労死を認定した珍しい判決」であると語り、「同様のケースに苦しむ人々にとって役立つ」と評価した。
訴状などによると、昭和62年頃に、男性は同社の関東支店(さいたま市)と業務委託の準委任契約を締結し、以後15年以上にわたり同社の業務にのみ従事していたが、平成16年2月、高根沢町にある工事現場事務所で倒れ、脳幹出血で死亡した。
遺族は、宇都宮労働基準監督署に対し、平成17年に労災請求したが、男性は会社と「準委任契約」を結んでいたが、雇用契約は締結していなかった為に「労働者」と認められず、「労働者ではない」と不支給処分になった。
労働保険審査会に対し、平成18年に再審査請求し、不支給処分が取り消され、平成21年に男性が契約を結んでいた同社関東支店のあるさいたま労基署に労災申請し、過労死が認められ、労働災害であると認定された。
訴訟においては、同社と雇用契約を締結せず、準委任契約を結んだに過ぎない男性が同社の「労働者」と認められるか否かが争点となった。
この点において判決では、従属義務がないにもかかわらず、男性が建設現場への常駐することを要求されていたり、作業着はもちろん名刺まで支給されており、従業員と同じ立場の「出向者」として管理されていたりしていた事情があるほか、報酬も労働の対価であるとして「実質的に使用される労働者だった」と認定した。
また、死亡直近の6ヶ月のうち4ヶ月などは、過労死認定基準である月80時間超の時間外労働があったとして、業務と死因の関連を認めた。
加えて、同社が勤務時間や業務量を確認していなかったことから、「心身の健康に配慮していない」とも指摘した。労働時間などを適切に管理していたとは言えず、安全配慮義務を怠ったと指摘して、同社の安全配慮義務違反を認定した。
▼外部リンク
戸田建設株式会社
http://www.toda.co.jp/index.html
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