手待時間は休憩時間?労働時間の見極めポイント

2018.11.29
間違えやすい「手待時間」の取り扱い

昨今、働き方改革の推進が叫ばれ、より生産性の高い働き方の実現、効率の良いメリハリをもった就業体制への切り替えが急務とされています。しかし、こうした労働スタイルの見直しが進む一方、いまだ労働時間の評価が正しく行われていないケースは少なくありません。

とくに間違えやすく、トラブルになりやすいものに、いわゆる「手待時間」の取り扱いがあります。どこまでが労働時間で、どこからが休憩時間なのか、勤務中に発生する具体事例においては線引きが難しいと感じられることもしばしばあるでしょう。そこで今回は手待時間と休憩時間にスポットを当て、労働時間性に関する基礎を解説します。

手待時間とはどんな時間?

一口に業務に従事する時間、勤務時間といっても、その中身はさまざまで、全ての時間が一様の作業性や緊張状態を要求するものではありません。現実には、作業と作業の間にあたる待機時間や次の業務にかかる準備時間、顧客対応に備える時間など、具体的に目に見える作業に従事していないけれど、完全にフリーな時間でもない、一種の“グレー”な時間が存在するはずです。

こうした時間を一般的に「手待時間」といいます。来客を待っている待機時間や、昼休み中の店番・電話番、突発的な事態には対応することが求められているビル管理や警備業務中の仮眠時間、運搬・運送業者のドライバーが貨物の積み込みや積み卸しのために待機している時間などは、代表的な手待時間の具体例です。

この手待時間は、作業をしていないから休憩時間なのでしょうか。それとも、勤務中と認められる労働時間なのでしょうか。結論からいうと、手待時間は労働基準法上の労働時間であり、就業時間としてカウントすべきで、休憩時間とみなしてはいけません。

休憩時間との違いは?

では、休憩時間との違いはどこにあるのでしょう。休憩時間については、労働基準法34条に定められており、そこでは労働者は休息のため、完全に労働から解放されることを保障されていなければならないとされています。休憩時間は、労働者がどのような拘束も受けることなく、自由に利用できる時間でなければならないのです。

これに対し、手待時間は作業に従事していない不活動な時間ですが、使用者の命令・指示があれば直ちに対応、業務に取りかからなければならない時間であり、労働者は通常の作業従事時間と同様、使用者の指揮監督下に置かれています。よって、一定の行動制約を受けている手待時間は、休憩時間でなく、労働時間と評価しなければなりません。

手待時間がとくに多い場合についても、労働基準法は断続的労働として特別な規定を設けていますから、手待時間はあくまでも労働時間にあたるとの見解です。

休憩時間との見極めポイントは、使用者(会社)の指揮命令下、監督下に置かれているかどうか、一定の場所に拘束されているなど労働者の自由権利に制約があるかどうかという点になります。

労働時間の途中に全くの行動制約がない状態で、労働者が本人の意思により自由に休息のための時間を過ごせる時間、完全に労働から解放される時間だけが、休憩時間と認められるのです。

ちなみに使用者には、労働時間が6時間を超える場合、少なくとも45分、8時間を超える場合なら少なくとも1時間の休憩時間を労働者に与える義務があるとも定められています。罰則規定も設けられた規定ですから、手待時間と休憩時間の区別は、割増賃金を支払うかどうかの給与計算のみならず、勤怠管理として徹底しなければなりません。

使用者側は、休憩時間としてカウントしている時間に、労働者へ何らかの指示を出し、自由な活動を制約してしまわないよう注意する必要がありますし、労働者側も手待時間が不当に労働時間から外されていないか、きちんと評価されているか、チェックしておくことが大切です。

就業規則などで定めた休憩時間に、突発的な事態でやむを得ず業務作業を行うことになったケースなどでは、のちに見解の食い違いでトラブルとなる可能性も高まりますから、タイムカードで別途記載するなど、双方が適正に労働時間を管理、把握し合える仕組みを整備しておくことも重要でしょう。

(画像は写真素材 足成より)

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高野勤一
高野勤一