7割以上が5万円の給与アップでも足りない!潜在保育士の語る本音と保育の実情

2016.04.14
処遇改善足りず!?7割以上が復帰せず

平成28年4月12日、保育者向けのポータルサイト「ほいくみー」を運営する株式会社ウェルクスは、法律相談サービスを手がける「弁護士ドットコム」と共同で、潜在保育士の復帰についてアンケートを実施。その結果を発表した。213名の潜在保育士の回答が集まったという。

今年3月、民主党や共産党など野党5党は、待機児童対策のため、保育士の給与を月5万円引き上げる処遇改善法案を国会に共同提出したことは記憶に新しいが、それは実際にどれほどの効果があるのか?同アンケートによれば、給料が5万アップしても復職したくないとする潜在保育士は76.4%。

現状のままでは復職したくないとする潜在保育士は79.8%なので、処遇改善法案の効果は僅か3.4%にとどまることになる。仮に月10万円増加すれば、逆に保育士に復帰したいという者が86.5%という結果になっているあたり、保育士の給与が安いというのは深刻な問題なのだろう。

保育士の安過ぎる給与と過酷な業務

実際、同アンケートでは、「給与への不満」が保育士を辞めた理由として最も大きい割合(63.4%)を占め、同時に復帰したくない最大の理由(87.1%)としてあげられている。

それを裏付けるように保育士としての給料は月収15万円未満という回答が54.5%と、実に半数以上であるというのだから、驚きである。

平成28年における新入社員の初任給の平均額は、大学院卒が約22万円、大卒が約20万円、短大・専門卒約18万円、高卒約16万円であるが、最低額の高卒の初任給にも劣る水準であるのだから。これでは潜在保育士が全国で約68万人と推計され、復帰したくないというのも無理はない。

また、保育士を辞めた理由として2番目に大きい割合を占めた「業務量や残業の多さ(60.1%)」であるが、これは処遇問題だけではなく、我々が思っている以上に保育士という業務が過酷であることがうかがえる。

処遇の悪さと過酷な業務が保育士を辞めさせ、保育士不足を生み出し、さらに一人の保育士にかかる負担を増大させ、それによってまた保育士が減るという負のスパイラルになっているのではないだろうか。

待機児童問題解決には、担い手の確保が必要!

待機児童問題は、少子化でこどもの数が減り認可保育所が増えても、未だに解決には至っていない。だが、それは当然だ。担い手たる保育士が十分に確保できなければ、そもそも保育所を増やすことすら困難になり、結局根本的な解決は不可能なのだから。

保育所は親が子どもを預け、安心して働けるようにしてくれる大切な施設だが、我々は肝心要の保育の担い手である保育士にはあまり目を向けていなかったように思う。今後は保育士達のこともあわせて、改めて待機児童問題について考えるべきではないだろうか。

(画像はプレスリリースより)

▼外部リンク

ほいくみー
https://hoiku-me.com

弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/topics/

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高野勤一
高野勤一