義務か任意か、事業者や人事担当者が知っておきたい「雇用契約」
2017.04.27
従業員を雇う際、多くの企業で使われている書類が「雇用契約書」。労働条件や各種手当てなどが書かれていますが、この契約書は必要なのでしょうか。また必要であればどんな点に注意すれば良いのでしょうか。
実は、雇用契約の締結に書面化を義務づける法律はありません。労働基準法では、労働条件や報酬など書面での明示、または口頭での明示を行うこととあります。つまり「通知・通告」は義務づけていますが、署名や捺印などの「契約」は触れていません。
ただ実際には、雇用契約を行うことは必要です。「通知・通告」または「口頭」だけという形にすると、お互いに内容を確認し合うことがないため、「聞いた」「言ってない」などのトラブルに発展しかねません。
お互いがルールを共通に理解していることが大切なのです。
トラブルを防止するためにも、最低限記載しておきたい内容を明確にしておきましょう。
主なものは、「労働契約期間」「有期労働契約を更新する場合の基準」「就業の場所・従事する業務の内容」です。また「労働時間(始業時間・終業時刻)」「残業の有無」「休憩時間・休暇」など労働時間。
さらに「賃金」「支払いの締め切り・支払いの時期」「支払い方法」。そして「退職に関する事項」です。解雇などの事由の場合も含みます。
書面による明示で注意するポイントは、「就業場所・従事する業務内容」。
部署や支社のある企業では配置転換有無の記載が必要になるでしょう。人事異動の命令などは、労働契約上の根拠が必要になります。雇用契約で条件としておかないと「契約内容と違う」と主張されてしまうこともあります。
残業手当てが出ない、交通費が出ない、などのトラブルも発生する可能性も出てきます。シフトがある場合は、「交替制勤務に関する事項」も記載しておくことをおすすめします。
また契約の相手がパートタイムである場合は、「昇給の有無」「賞与の有無」「短時間労働者の雇用管理の改善などに関する事項に関わる相談窓口」などを明示すると良いでしょう。
文書にしたほうが良いですが、口頭でも可能なものを明示してみます。
まず「最低賃金・昇給に関する事項」「退職手当ての定めが適用される労働者の範囲」「安全や衛生に関すること」「災害補償、業務外の傷病扶助に関すること」などありますが、会社によって実施する内容が異なります。
一例だと、職業訓練に関する事項、表彰や制裁に関する事項、休職に関する事項などがあります。
ここで押さえておきたいポイントは、「災害補償、業務外の傷病扶助に関すること」。
労働基準法では、損害を出した従業員を金銭的な理由で身分を拘束しない規定が定められています。しかし賠償金を請求することまでは禁止していません。書面で損害の賠償義務を定める会社もあります。
「雇用契約」「労働契約」などは同じ意味の言葉と捉える人が多いと思います。しかし違いはあります。
「労働契約」というのは、「労働基準法」に定められた基準にもとづいて「労務」を提供し、「賃金」が支払われます。それに対し「雇用契約」は1対1の契約で行われるものを指します。
ただあくまでも法律的な観点。労働基準法にもとづいている契約であれば、「雇用契約」となっていても「労働契約」ということになります。大切なのは、きちんと「契約」を交わすことです。
(画像は写真ACより)
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