働く上で見ておくべき4つの保険法

2016.01.01
健康保険法

働く上で、万一のことがあった時にお世話になるのが保険である。今回はその中で重要な4つの保険法をピックアップした。条文や施行規則をできるだけ分かりやすく解説しようと思う。はじめは「健康保険法」からみてみよう。

医療機関にお世話になったとき、保険証を見せると自己負担額は総医療費の3割になる。これは健康保険法により定められたルールだ。このような制度は、世界的にも非常に優れた医療保険制度だと言われている。

この法律の対象は、民間企業の会社員などの扶養者とその被扶養者である。先ほどの例の他にも、病気で長期間働けなくなった際に「傷病手当金」の支給が受けられる。たまに後述の「休業補償給付」と混同してしまう人がいるが、これは業務上のケガや病気に限るので違いを理解しておこう。健康保険法は、業務外での負傷や疾病、死亡、出産を対象にしている。

厚生年金法

公的年金は”2階建て年金”と呼ばれており、1階部分が国民年金、2階部分が厚生・共済年金になっている。厚生年金法はこの2階部分についての規定が書かれているが、厚生年金に上乗せされる3階部分とも言われる、厚生年金基金に関しても述べられている。

制度ができた昭和17年当初はブルーワーカーのみが対象になっていたが、その後の改正で適用除外とされていた女性や民間企業の会社員も対象になり、老齢・障害・死亡の際に政府が保険者となって給付を行う。厚生年金は被保険期間の収入が多ければ多いほど年金額が比例して高くなるというのが特徴だ。厚生年金法は、急激な少子高齢化や社会経済情勢に応じて様々な改正が行われている。

雇用保険法

雇用保険法は、失業者に対して所得保障をするだけでなく、労働者にとってよりよい雇用環境になることを目指して制定された法律だ。具体的には、求職活動支援や失業の予防、雇用状態の是正や労働者の能力開発、能力向上を目的としている。

労働者が失業をしてしまったときや、雇用の継続が困難になった際、その人の生活や雇用を支えるのが雇用保険だ。雇用保険事業の費用は保険料と国庫により負担される。雇用保険によって支払われる失業等給付には、「求職者給付」「雇用継続給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」がある。

たとえば、雇用継続給付には高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付があり、それぞれ労働者が仕事を続けられるよう、賃金の一部が補助される仕組みになっている。

労働者災害補償保険法

労働者災害補償保険は「労災保険」と一般的には呼ばれるが、労働者が仕事の間もしくは通勤中に負傷したり病気になった際に、会社が労働者の療養費を負担することが定められている。また労災保険に関して労働基準法では、働くことができず賃金がもらえない場合は、生活保障として平均賃金の60%を支払うことを定めている。

今紹介した「療養補償給付」、「休業補償給付」の他にも、死亡した場合に支払われる「遺族補償給付」や葬祭を行うときには「葬祭料」が支払われる。これらの給付金は、雇用主のみが負担する労働保険料によって賄われており、従業員が多ければ多いほど、雇用主は多額の保険料を支払っていることになる。

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高野勤一
高野勤一