人事異動するときに必要な誓約書って何?誓約書の効力と根拠!

2015.12.28
入社時に提出する誓約書

人事異動が慣例的になされる職場であれば、まず新入社員には入社時に「誓約書」を提出させることがほとんどである。人事異動は社員の生活に大きな影響を及ぼすので、会社側も慎重に進める必要がある。

「入社誓約書」には、従業員を採用するときに従業員と会社間の約束をとりつけるための書類だ。おおまかに次のような項目が書かれることが多い。
・服務規定の遵守
・経歴・資格の確認
・秘密保持
・人事異動
・職員の個人情報提供

誓約書の効力

では、入社誓約書によって約束された人事異動はどれほどの効力を発揮するのだろうか。結論からいえば、法的効力を持たないとは限らない。しかし、あくまでも誓約書は約束をとりつけるだけのものなので、違反したからといって処罰したりするような直接的な効力はもっていない。

少々曖昧な言い方になってしまったが、過去に東京地裁によって下された日本コロンビア事件の判例によると、「誓約書等として配転・転勤の応諾を定めて明示しておくならば、より強く会社とその従業員間において配転・転勤義務があてはまる」とされたことがある。要するに、法的効力はないかもしれないが、争いに発展したときに一定の根拠として効力を発揮することはある。

整合性が大切

人事異動には同一企業で職種や勤務地を変更する「配転」、他の企業において地位はそのままの状態で就労する「出向」、元の企業と労働契約関係が終了し新たに他の企業と雇用関係を結ぶ「転籍」がある。企業は人事移動命令を行使するときに、包括的合意でよいのか個別的合意が必要なのかが法律によって定められている。

たとえば、「出向」は就業規則や労働協約でこれの根拠になる規定が存在していれば、包括的な合意があると認められるが、「転籍」は個別的な合意が必要であるとされている。このように、重要になってくるのは入社誓約書の根本となるルールづくりにある。

しかし、入社誓約書が就業規則や契約内容を約束させる書類である以上、就業規則や雇用契約書との整合性がとれる内容にするべきである。それらに食い違いがあった場合、たとえば次のようなときにトラブルに発展しかねない。

従業員の採用時に勤務地を限定した契約内容であったのにもかかわらず、人事異動について記載のある契約書に従業員が同意したからといって会社が人事異動をさせようとするケースである。この場合、残念ながら本人の同意なしに異動させることはできない。

また、就業規則に懲戒に関する規定がない場合、誓約書に反する行為があっても直接処罰することはできない。このように誓約書を作成する際には、誓約書の立場を理解し、就業規則や契約との整合性をはかることが大事になってくるのだ。

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高野勤一
高野勤一