ちょっと待った!懲戒処分を行う前に確認する判断材料と要件
2015.11.20
従業員の和を乱すような行為や、会社の信頼を損なう行為をする者には処分を行うべきである。しかし、使用者も従業員を好きなように処分できるわけではなく、基準に沿って正しい手続きを踏まなければいけない。今回は、懲戒処分になりうる従業員を発見した際の対処法を紹介しよう。
まず、懲戒処分は就業規則によって予め周知された規定に沿って行われる。そのため、就業規則の作成義務を負わない従業員10人未満の会社も、就業規則を作成するべきであるといえるだろう。仮に懲戒手続に不備や違反があると、懲戒権の濫用と見なされ無効になってしまう。
以下の有効要件を満たしたもののみが、懲戒処分として有効になる。これを違反したものは無効になるので、ひとつひとつチェックが必要だ。
・罪刑法定主義の原則
懲戒の根拠が必要だ、ということを意味している。そのため、就業規則に記載されている懲戒規定によって処分が下される。
・平等取扱の原則
特別な理由なく地位や人柄によって処分の重さを差別することは許されていない。不祥事の前例がある場合は、それとも平等な扱いをする必要がある。
・二重処罰の禁止(一事不再理)
一度判決が下された罪に対しては、二重に処罰を与えることはできない。
・相当性の原則
処分の重さには客観的妥当性が必要で、例えばそれほど重大でない違反行為を「懲戒解雇」とすることはできないので、その場合は順次軽い処分にできないか検討する必要がある。
・遡及処分の禁止
規定が設けられた前の事犯に対して、その規定を適用することはできない。
・事実関係の調査
実際にその事実があったのかを確認する。被害者・事情を知る可能性のある従業員・不祥事の当事者からのヒアリング、証拠品の収集が必要になる。ここで気をつけたいのが、被害者の気持ちを第一に尊重しながら調査を行うことだ。
・懲戒事由についての確認、懲戒処分の検討
就業規則に基づき、その行為がどの懲戒規定に該当するのかを検討する。過去に社内で同様の懲戒処分を受けた例がないかも調査する。その上で、処分の重さを吟味する。
・就業規則記載の適正な手続
懲罰委員会に諮問したり、重い処分では処分対象者に面談にて弁明の機会を与えた方がよい。特に懲戒処分や論旨解雇の場合は必ず本人の意見を聞く機会を与える。
・処分内容の決定
最終的な処分の内容を決定する。
・本人へ通知、懲戒処分の実施
通知は書面で行う。ここで始末書または事実確認書を取る。
このような順序で処分を行う。特に事実関係の確認や処分対象者との面談は重要なポイントであるので、慎重かつ正確な手順を心がけたい。
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