社内の安全対策は万全?企業が社員を守るために行う安全対策一覧

2015.11.04
社内の安全対策をすべき理由

「経営者にとって、100万円の損失を未然に防止することは、100万円の利益を出すことと同じくらい重要だ」という言葉もあるくらい、企業は安全対策に向き合わなくてはならない。

企業はどんなに経営が上向きであっても、常に次の5つのリスクにさらされていることを忘れてはならない。そのリスクは、財産損失のリスク(火災や地震、自然災害、盗難などによって直接損害を受ける)、収入減少のリスク(取引先の倒産で企業の売り上げが減少するなど)、損害賠償のリスク(他人の権利を犯したことによって生じる法律上の損害賠償責任)、人的損失のリスク(経営者や従業員が事故にあったりや病気になったりする)、ビジネスリスク(営業戦略上のリスクや、株式投資・融資などの資産運用上のリスク)である。

しかし経営者の中には、これらのリスクを重要視していない人もいる。たとえば、「交通事故は運転手の注意力の問題」として、十分な安全運転管理を行わなかったり、危機管理マニュアルの存在は社内のほとんどの人が認識しているが具体的な内容は全く周知されていなかったり、穴があったりするマニュアルを周知していることがある。

特に中小企業では目先の業績のことにとらわれがちだが、会社での安全衛生管理にはさまざまな決まりもあり大変重要な課題なのだ。製造業の場合、常時50人以上の労働者を使用する事業所では安全管理者、衛生管理者、産業医を選任することが決められている。また、安全管理者などを任命した際には、所轄の労働基準監督署長に報告することが義務づけられている。

厚生労働省は、様々な事項に関する安全対策のガイドラインを作成しているので、そちらも注目してほしい。それでは、企業が取り上げるべき安全対策にはどのようなものがあるのか、その事例を紹介しよう。

安全対策事例

・4S活動の推進
4Sとは、「整理、整頓、清掃、清潔」のことを指す。不要なものを排除(整理)し、必要なものを決められた場所に設置(整頓)し、ゴミやホコリを取り除き(清掃)、この状態を維持すること(清潔)は、安全で健康な職場づくりや生産性の向上につながるとされている。

4S活動を推進するためには、まず活動計画をたてることが望ましい。まず、経営者や責任者が4Sを実施する目的を明示し、推進者を任命する。そして、4S活動を推進するポスターや標語で徹底を促し、チェックシートを活用してその達成状況を把握できるようにする。

例えばチェックシートには、「清掃(作業所にはゴミが落ちていないか)」「清潔(トイレは清潔にしてあるか)」などというように項目を設け、達成できているかを評価できるシステムをつくるとよい。

・メンタルヘルス対策
平成27年の12月には、労働安全衛生法の一部が改正される。その変更点に含まれるのが、労働者が常時50人以上の事業場において、医師または保健師等による「ストレスチェック」を実施する制度が義務づけられた。

メンタルヘルス対策を講じる企業は増加傾向にある一方、従業員数が50人に満たない小規模事業場ではまだまだ取り組みが遅れているので、促進していく必要がある。

・安全運転管理
企業にとって自動車は必要不可欠といっても過言ではないが、その安全対策は未熟な企業もみられる。「自動車保険に入っているから安心」とするのは大変危険で、保険に入っていても企業は様々な責任や損害を負うことになるため、未然の事故防止が求められるのである。

仮に、従業員が業務中に交通事故を起こした場合、企業が事故の原因を作り上げていたらその責任者は刑事上の罰則が課せられることになる。それだけでなく、被害者に対する民事上の責任を負ったり、運転手は運転免許の停止や取消など行政上の責任を負わされることになる。それだけでなく、事故は企業の取引先や顧客、社会からの信用低下につながるため、企業には基本方針の設計が求められる。

例えば、企業はマイカー通勤を禁止しているところが多いと聞くが、このようなルールを徹底したり、容認する場合も一定の条件を設ける必要があるだろう。これ以外にも、免許保持者というだけで運転させるのではなく、安全に運転できる者のみに運転を任せたり、ドライバーの運転記録を把握することで適切な管理を行う安全運転管理が企業に求められる課題だ。

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高野勤一
高野勤一