人手不足を解消するジョブ・リターン制度とは?

2020.12.07

現在、多くの企業が人出不足に悩まされています。企業についての調査を行っている帝国データバンクが、2020年4月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」によると、正社員が不足している企業は、全体の31%であることが明らかになっています。

人手不足を解消するには、どのような対策をとればよいのでしょうか?今回は、人手不足を改善する対策の1つ、ジョブ・リターン制度の詳細やメリット・デメリットについてご紹介します。

ジョブ・リターン制度って何?

ジョブ・リターン制度とは、介護や育児、配偶者の転勤を理由に自己退職した人を再雇用するための制度です。人材確保や、社員の働きやすい環境作りを目的に施行されています。制度の背景には、家族の介護や子育てを理由に仕事をやむを得ず辞めている人が沢山いることがあります。

厚生労働省が2019年に行った雇用動向調査によると、離職者の6.6%が育児や介護などの個人的理由で離職していることが明らかになっています。ジョブ・リターン制度は、このような人々に再び就労してもらい、人手不足を少しでも解消するための制度と言えます。

ジョブ・リターン制度のメリット

ジョブ・リターン制度のメリットとして、以下の2つがあげられます。

人材育成コストの抑制
まず、ジョブ・リターン制度のメリットとして、研修コストが抑えられることがあげられます。ジョブ・リターン制度で再入社した人は、以前入社した際、既に研修を受けている場合が多いからです。

また社風や企業理念を理解した状態で入社するため、企業と社員の間にミスマッチが起こらず、未経験の新入社員に比べて、離職する確率も低いです。

企業のイメージ向上
ジョブ・リターン制度を採用すると、企業のイメージ向上にもつながります。「女性が働きやすい会社」「子育てや介護と仕事を両立しながらキャリアアップできる会社」というイメージが定着するからです。

人材派遣や求人広告の作成を行っている「株式会社リクルートホールディングス」が2017年から2018年にかけて実施した「転職決定者アンケート」によると、転職した女性の22.3%が、育児環境が整っていることを理由に、転職先を決めたことが明らかになっています。

そのためジョブ・リターン制度を採用すると、企業のイメージアップだけでなく、新たな人材の獲得にもつながります。

ジョブ・リターン制度のデメリット

ジョブ・リターン制度のデメリットとして、制度を明確化していないと、離職者が増えることがあげられます。どうせ再雇用されるからと、長期旅行や転職を理由に、簡単に仕事を辞める人が現れるからです。そのため、前述の事態を防ぐためにも、誰が利用できるのか、退職して何年以内なら利用できるのかを、あらかじめ明確に提示しておく必要があります。

ジョブ・リターン制度の導入例

サントリーホールディングス株式会社では、2007年から勤続3年以上で、介護や育児を理由に仕事を退職する人を対象としたジョブ・リターン制度を採用しています。導入してから10年の間に56人の人が制度を使って退職し、その内8人が無事に復職しています。

まとめ

多くの企業が悩まされている人手不足。現在そんな状況を改善する施策である、ジョブ・リターン制度が注目されています。

ジョブ・リターン制度とは、子育てや介護、配偶者の転勤などを理由に仕事を辞めた人を再雇用する制度です。制度には人手不足解消や人材育成コストの抑制、企業イメージの向上などのメリットがあります。しかし条件を明確化しなければ、どうせ再雇用されるからと、簡単に離職する人が増えるおそれがあるので、注意が必要です。

(画像はいらすとやより)

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高野勤一
高野勤一