マルチタスクは本当に効率的?実態と弊害について解説

2020.09.08

情報はあふれ、日々は目まぐるしく動いています。いま日常生活で多くのひとに求められているのは、あふれる情報を的確に素早く分類し、時には同時進行で処理する「マルチタスク」の能力。たしかに 複数の作業を同時にこなすくらいの器用さがないと、業務はたちまち停滞してしまいます。テキパキと仕事を片づけていく同僚にあこがれを抱くひとも少なくないはず。 しかし、この方法は本当に効率的といえるのでしょうか? 今回は「仕事がデキるひとの条件」との印象も強いマルチタスクについて詳しく解説します。

マルチタスクとは?

マルチタスクの「マルチ」は、英語で「複数の」という意味です。つまり、マルチタスクとは、複数のタスク(業務)を意味し、現在ではそれらを同時にこなす仕事のやり方そのものを指します。これと対極的な言葉に、1つの業務を集中して行う「シングルタスク」があります。

会社で行う日常的なマルチタスクの例として、次のような動作があげられます。

・クライアントに電話をかけながらパソコンで書類作成
・ミーティングに参加しながら別件の資料閲覧、メールの返信

もっと身近なところでいうと、ランチをとりながらパソコンで仕事のリサーチ、あとは歩きながらのスマホなんていうのももちろんマルチタスクに分類されます。

マルチタスクのメリットとして「複数の仕事を同時にこなすことで作業効率があがる。」と考えるひとは多いかもしれません。しかし実際人間は、マルチタスクで効率化をねらえる生き物なのでしょうか?

人間はそもそもマルチタスクができない

結論からいうと、人間の脳は、元来マルチタスクに向かないようできています。では、私たちがマルチタスクを行っている(と思っている)時、脳はどのように働いているのでしょうか? 実は人間の脳はマルチタスクを細かく分解されたシングルタスクの集合体として処理していたのです。

また、人間がマルチタスクを行った場合、IQが8歳の子供と同じくらいにまで低下し生産性が40%も落ちることが明らかになっています。さらに、無理にマルチタスクを続けることは脳に下記のような悪影響を及ぼします。

・情報の取捨選択能力の低下
・別のタスクに脳が切り替えるスピードの低下
・記憶力の低下
・脳のストレスのよるうつ病リスクの増加
・共感力の欠如
・感情コントロール能力の低下

つまり、マルチタスクを続けることは、脳に大きな負担を与えてしまうことに等しいのです。

マルチタスクが可能だと思える行動は、実はマルチタスクではなかった

中にはこのように考えるひともいるでしょう「歯磨きをしながら音楽を聴いたりできるのだから、実行可能なマルチタスクもあるのでは?」

実はこのような行動は、片方が無意識でできる習慣化された運動であるというところがポイントであり、厳密にはマルチタスクとは呼べないものなのです。上の例でいうと、歯磨きが無意識でできる習慣化された運動に当たります。歯磨きをする際「右手で歯ブラシを握り、その手あるいは腕を前後左右に細かく動かし、かつ頃あいをみてその場所を少しづつずらしながら」歯を磨く、なんて考えないですから。

このように、片方の行動が無意識に行えるものならば、もう片方の行動に全集中することは可能となります。 結果「歯を磨きながら音楽を聴く」行為はマルチタスクさながらに同時に行うことができるわけです。

ところが、会社の業務となると話は別です。なぜなら、いくら慣れている業務であっても、その性質上無意識で行えるものはないからです。

マルチタスクをシングルタスクに切り替えよう

もしも、会社で複数の業務をこなさなくてはならなくなった場合、慌てず1つずつ、着実に業務をこなすシングルタスクを行うようにしましょう。そのほうが前述の理由からも脳に負担がかからずに済み、結果的にマルチタスクを行うより効率よく仕事をこなせるからです。この時大切なことは、数あるシングルタスクの優先順位を考えて作業スケジュールを組み、すべての仕事が結果的に期日までに終わっているよう気を付けることです。心配することはありません。実際、1つの業務を集中してこなすシングルタスクは、マルチタスクよりも最大10倍も生産性が高いことがわかっています。

また1つ1つの業務に制限時間を設けるのも有効です。制限時間を設けることで、無駄な動きが減り効率的に業務をこなすことができるからです。

さらに、1つの業務を集中してこなす際は、途中でメールチェックやSNSの確認など業務に関係無いことを行うのは控えましょう。実は上記のような行動は「ちょっとだけ」「気分転換」のつもりでも、マルチタスクをこなしている時と同じくらい脳にダメージがかかっていることをどうか覚えておいてください。

従って、会社で複数の業務をこなさなければならない場合は、1つ1つの業務を集中してこなす、シングルタスクを取り入れましょう。

(画像は「ぱくたそ」より)

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高野勤一
高野勤一