突然の転勤命令!拒否できるケースをご紹介
2020.04.03
突然転勤の辞令を言い渡された場合、転勤を拒否できるのでしょうか。
拒否した場合、どのような処分になるのでしょうか。
今回は転勤を拒否できるケースや拒否したときの対処法、過去の転勤拒否に関する判例をご紹介いたします。
原則として会社からの命令であれば、拒否できません。
個人の状況によって、不便を感じたとしても、会社には「人事権」が認められているのです。
「人事権」とは、労働者を組織構成の構成員として受け入れ、採用や配置、異動などの決定権限を持つことを指しています。
「子どもが転校することを嫌がっている」「マンションを購入したばかり」などの理由は認められないケースが多いです。
まずは就業規則を確認してみましょう。
就業規則に「勤務地は〇〇とする」あるいは「勤務地限定採用」というように、転勤がないことを前提とした雇用契約を締結したケースは、転勤を拒否できます。
会社が就業規則に「転勤を命ずる」旨の記載をしていないにも関わらず転勤を強制したり、転勤を拒否したことによる解雇を行った場合は「雇用契約違反」となります。
権利濫用とは、権利を行使するにあたり、範囲を逸脱した、正当とは認められない権利を指します。
転勤に関してであれば、報復のためや性別、年齢による差別である場合は、転勤理由を不当とみなし、拒否することができます。
例えば、重篤な病気を抱えた家族がいる、要介護の親がおり、自宅を離れることで生活が困難になるなど、深刻な理由がある場合は転勤を拒否できる可能性もあります。
しかし、「妻が現在の仕事を退職すると金銭的に困難になる」「子どもの保育園が遠くなる」などの理由では、転勤の拒否は認められないことが多いです。
就業規則に転勤あり、と記載があるにもかかわらず転勤命令を拒否し続けた場合、降格や解雇処分を受けることがあります。
前述の「権利濫用」に該当しない転勤命令は、業務命令違反となります。
転勤を命ぜられたことにより退職をした場合は、「自己都合による退職」扱いになります。
会社都合による退職ではないので、失業保険を受け取ることのできる時期が遅くなります。
しかし、人生において現在の仕事よりも優先したいことがある場合も人それぞれです。
自分や家族への不利益やストレスに耐えられないのであれば、思い切って転職することも解決策の1つとして考えておきましょう。
この事件は、姫路工場で勤務していた従業員60名に対し、その当時勤務していた部署を閉鎖し、茨城県の工場への転勤命令を押し付けたものです。
この命令権の乱用により、50名が退職へと追いやられました。
転勤命令を受けた60名のうち、2人の従業員は、家族の介護と生活の保障のため、同じ姫路工場内での配置転換を希望しました。
56歳の従業員には、精神疾患を抱えた妻と要介護2の母親の生活支援のため、この転勤命令には応じることができませんでした。
しかし、会社側がこれを認めませんでした。
この2人の従業員は「家族の介護ができなくなる」と、転勤命令の無効を神戸地裁に訴えを起こしました。
裁判の結果、甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもので、配転命令権の乱用にあたるとして指摘し、転勤命令は無効としました。
転勤命令は日々の仕事と同じように、会社からの業務命令であり、拒否することは難しいです。
しかし、正当で深刻な理由があれば、拒否することもできます。
また、突然の転勤命令により、自分や家族の生活環境が変化するとストレスが溜まることもあるかと思います。
しかし転勤は自己のキャリアアップのチャンスであり、新たな挑戦の1つであると前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。
まずは、就業規則で転勤の有無を確認し、転勤の理由が正当であるか、また、転勤が困難である場合、拒否できるケースの事例を確認しておきましょう。
(画像はPixabayより)
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