労働時間の把握の義務化!その改正の中身とは?

2019.09.30
労働時間の把握の義務化される背景

日本は世界でも長時間労働が蔓延っている国として知られています。ブラック企業やサービス残業という単語に象徴されますし、不名誉なことに過労死という単語はそのまま海外でも通じてしまう程有名になっています。

終身雇用が当たり前だった昔の日本は、働いた分だけ賃金の見返りがあったり、長時間労働を美徳としたりする時代でした。しかし、今の時代は過去の価値観と合わなくなっています。悲しい事実ですが、日本では過労死や過労自殺が絶えません。

メディアで過労死が大きく取り上げられ話題になることもありますが、すべての企業が長時間労働の是正に取り組んでいるわけではありません。

ブラック企業という単語が長時間労働を強制する会社だけを指すわけではありませんが、この単語が使われている現状を見ると長時間労働を強要する企業はまだ存在すると言えます。

現在の日本政府は働き方改革を提唱しており、対策の一つとして検討されたのが長時間労働の是正です。2019年から一般の従業員だけでなく、管理職にも労働時間の把握を義務化するよう法改正が予定されています。

労働時間の把握の義務化に関する法改正の内容

労働時間の把握の義務化に関する法改正とは、正確には労働安全衛生法関連省令を改正するという方針が決まっています。

適用される範囲
働き方改革の中で残業時間については月、年の上限が明確に設けられ、違反が認められれば罰則の適用は免れなくなります。管理職は労働基準法で労働時間に関して適用外とされていますが、残業時間の上限の設定で管理職の負担が重くなることは予想できます。

一般労働者と同じ仕事をする管理職も少なからずおり、残業時間の規制によって一般労働者の仕事を管理職がカバーするとなればその負担は計り知れません。

労働安全衛生法の改正は管理職の過重労働を防ぐために一般労働者だけでなく管理職にも労働時間の把握の義務化を適用することになります。ただ、過去に問題になった名ばかり管理職の例のように、法の抜け穴をつく勤怠管理の対象外となる従業員が出てくるかもしれないことは懸念されます。

法改正前後
今までも労働基準法の改正はありました。しかし、2019年から適用される労働時間の把握の義務化に該当するのは労働安全衛生法です。労働基準法ではないのは労働者すべての健康管理や健康の確保を目的とした法改正だからです。

健康管理のためには、まずは働きすぎていないかどうか確認するため労働時間の把握が必要だということです。

今までのように労働者がそれぞれに労働時間を管理するのではなく、これからは企業が従業員の労働時間を把握するためにパソコンの起動時間やICカードなどで客観的に労働時間の記録を残して、3年保存しなければなりません。

月の時間外労働が一定の時間数以上になると労働者からの申し出で医者との面談が義務付けられます。労働安全衛生法の改正について、厚生労働省が発行している労働時間の把握の義務化に関するガイドラインに詳細が掲載されています。

労働時間の把握が義務化された後

労働時間の把握の義務化が施行されてから先のことは、しばらく様子を見ないことにはわかりません。企業は着々と勤怠管理の仕方について見直しや準備をしているでしょう。

しかし、労働時間の把握を義務化して本当に残業時間の抑制に繫がるかどうかは不明です。もし過労死や過労自殺者が出た場合は、今まで以上に企業は矢面に立たされることは間違いありません。

単なる労働時間の把握で留まらず、残業時間の抑制のために業務の効率化の方法を考えるなど労働時間の把握の義務化を企業変革の機会として捉えるべき時だと言えます。

(画像は写真ACより)

記事をシェアする

石藤明人
石藤明人