定年後も働きたい 高齢者の願いに企業はどう応える?
2019.05.26
少子高齢社会を迎え、これからは元気な高齢者も働いていかなければ、老後を安心して暮らせない時代になってきました。
そうした社会情勢を受けてか、「健康であるかぎり働き続けたい」と考える中高年が増えてきました。最近の調査では、働く男女の半数以上が「定年後も何らかの形で働き続けたい」と答えたそうです。
国も65歳まで希望者を雇用し続けるよう企業に求めていますし、定年制を廃止したり年齢を65歳まで延長したりする企業も増えています。
この流れは、今後も定着していくのでしょうか。
高齢者の就労支援を行っている「マイスター60」(東京都港区)が今年3月、配偶者のいる50代の男女500人ずつを対象にアンケートをとりました。
調査は「定年退職後の生活プランについて、どの程度夫婦で共有しているか」が主眼でしたが、注目したいのは「何歳まで働きたいですか?」という問いへの回答です。
それによると、「60歳まで」と答えた男性は14.8%、働く女性は20.0%。それ以外の人たちは60歳を過ぎても働きたいと答えたのです。
一番多かったのは「61歳から65歳の間」で男性39.4%、女性28.7%。「年齢に関係なく働けるうちはいつまでも」という答えも男性で13.0%、女性で26.9%ありました。女性の中では、2番目に多い答えです。
働きたい理由は「お金や日々の生活費のため」が男性で81.6%、女性が76.4%。複数回答ですが、断トツです。やはり、貯蓄や退職金、年金だけでは不安なので、できるだけ長く働きたいという人が多いのでしょう。
高齢者の雇用については、国も力を入れています。「高年齢者雇用安定法」によって、企業は定年の廃止か65歳までの年齢の引き上げ、65歳までの継続雇用制度の導入、これらのいずれかを実施しなければなりません。
さらに、国は高齢者が働きやすい環境づくりへの取り組みや、65歳以降も働き続けることのできる制度の導入も求めています。
高齢者雇用に取り組む企業には助成制度も用意されていて、定年を65歳以上に引き上げたり、高齢者の雇用管理制度の整備を行ったりすると、経費や人件費の一部に助成金が支給されます。
こうした国の方針や法改正によって、高齢者の雇用制度も多くの会社で定着してきました。「年を取っても働きたい」と考える人が増えているのも、制度の普及と無縁ではないでしょう。
現在は、給与水準を引き下げるなど処遇を見直したうえで定年後に再雇用する制度を導入している企業が多いようですが、最近は定年年齢の引き上げや定年制の廃止に踏み切る企業も増えています。
定年年齢の引き上げや定年制の廃止など高齢者雇用の制度改革は、2018年頃から各社で目立ってきました。
たとえば、情報通信会社のTIS(東京都新宿区)は、2019年4月から定年年齢を65歳に引き上げました。旧制度では55歳で処遇を見直し、60歳以降はシニア職として再雇用。しかし、新制度では55歳以降、処遇も待遇も変わりません。
これによって「年齢にかかわらず実力主義を貫ける人事制度」を目指すそうです。
さらに、店舗や商業施設の企画制作を手がけるラックランド(東京都新宿区)は昨年1月から、正社員として就労可能な年齢を85歳に引き上げました。
年2回、人事面談を行って雇用形態や勤務日数を見直すことで、個人の体力や能力、ライフプランに合った働き方をしてもらうそうです。
これから超高齢社会を迎える日本は、年金や医療など社会保障の見直しを避けて通れません。そして、高齢者も働かなければ、社会を維持することが難しくなるでしょう。また、高齢者に購買力がなけば、企業はモノを売ることができなくなります。
高齢者をいかに活用し、業績に向上につなげていくか。高齢者雇用は企業にとって社会的責務であると同時に、生き残り戦略でもあるのです。
画像は写真ACより
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