「賢い働き方」って何?スマートワーク実践企業に学ぶ
2019.05.23
国を挙げて「働き方改革」に取り組む中、「スマートワーク」という言葉をよく聞くようになりました。直訳すれば「賢い働き方」です。
私たちの仕事のやり方を変える「賢い働き方」とはどのようなものなのか。先進的な導入事例を紹介しましょう。
「スマートワーク」とは主にITCを使った業務の効率化や柔軟な働き方を意味しますが、その内容を狭くとらえるか、広くとらえるかによって、少し違った意味になります。
最も狭い意味で使われるときは、インターネットによる遠隔地での業務を指し、テレワークやリモートワークとほとんど同じ意味です。
そして通常はテレワークやAI(人工知能)などに活用による業務効率化と、それによる育児支援策の充実やダイバーシティ(働き方の多様化)の推進を指すことが多いようです。
しかし、さらに広くとらえて、業務効率化やダイバーシティの実現による人材の定着や経営体制の変革、基盤強化という意味で使われることもあります。
ただ、前提となるのはITCの活用であることには変わりなく、テレワークやテレビ会議の導入、デジタル化によるペーパーレスは必須です。
そのうえで、そうした取り組みを業務の効率化だけでなく、各個人のワークライフバランスに配慮した働き方や長時間労働の削減、さらに労働時間の短縮の実現にまでつなげていかなくてはなりません。
ですから、とりあえずテレワークを導入してみるといった部分的なITCの導入ではなく、人事制度や組織のあり方を含む経営全体の見直しを進めながらITCを導入していくのがスマートワークだといえるでしょう。
日本経済新聞グループでは毎年、先進技術の導入や組織改革などによる働き方改革を生産性向上につなげている企業を選び、「日経スマートワーク大賞」を贈っています。今年は、サントリーホールディングが受賞しました。
サントリーと前年の大賞であるコニカ・ミノルタの取り組みを簡単に紹介しましょう。
早くから働き方の見直しに着手し、テレワーク勤務は10分単位で利用が可能。場所を問わず仕事ができます。テレワーク勤務の利用者数は2017年で4845人。約8割の社員が利用しています。
また、全国の拠点をインターネットでつないで会議を行う遠隔地会議ツールやロボットを使った業務自動化(RPA)などITを活用して業務の効率化を図っています。
さらに、こうした多様で柔軟な働きを実現するとともに、女性の管理職登用やシニアの雇用といったダイバーシティを進めていることなどが評価されました。
2018年の大賞受賞企業です。
ICTの活用では、全従業員がテレワークできる環境を整え、RPAなどによる作業効率の向上を進めています。
また、事業戦略として「課題解決型デジタルカンパニー」を掲げ、ICTを活用してさまざまな情報を全社的に共有・集約。新たな製品・サービスを開発するための基盤整備や技術の検証にも取り組んでいます。
サントリー同様、こうした方針が多様な人材の活用につながっています。
大賞を受賞した2社はいずれも世界的な企業で、取り組みも日本企業の中ではかなり先進的なので、「とてもまねできない」と感じる中小企業もあるでしょう。
しかし、両社ともスマートワークを経営戦力の一環として進めています。テレワークやRPAも単に従業員が働きやすい環境を整えるということにとどまらず、企業として生き残っていくために必要な人材の確保や活用のための施策だと考えているのです。
確かに、スマートワークの導入には多額の初期費用が必要ですし、セキュリティ対策も万全にしなくてはなりません。テレワーク時にどうやって労働時間を把握するのかという課題も生じます。
しかし、少子高齢化による人手不足やITCの進歩に対応していかなければならないのは、大企業も中小企業も同じ。大企業も試行錯誤を重ねながら対応してきているのです。
もし「働き方改革」への対応に悩んでいるのでしたら、まずは、ITCを使った業務の効率化や柔軟な働き方の導入から始めてみませんか。
それらを軌道に乗せるために一つ一つ課題を解決していけば、それらはいずれ、経営の変革につながっていくことでしょう。
画像は写真ACより
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