週3日で有給休暇取得を促進 日本MSの働き方改革
2019.05.17
有給休暇といえば、労働者の権利で「いつ取得するかは本人の自由」というのが、これまでの運用でした。しかし、「取得するかどうかは本人の自由」で、周囲の状況や上司の意向を忖度(そんたく)してなかなか有給休暇を取得しにくい職場が多い、というのが実際のところでした。
その有給休暇が2019年4月から、最低年5日、強制してでも社員に取得させなくてはいけなくなりました。もし、5日以上有給休暇を取らせないと、会社は労働基準法違反に問われ、30万円以下の罰金が科せられかねません。
とはいっても、会社としては、単に社員の休みを増やすだけでは能がなく、その休みをいかにモチベーションの向上につなげられるかが経営の腕の見せ所。日本マイクロソフト(MS)の事例をもとに、どうしたら社員に有意義な有給休暇を取得してもらえるのか、考えてみましょう。
年次有給休暇について確認しておきます。有給休暇は雇い入れから6カ月継続して勤務し、労働日の8割以上出勤した労働者に与えられます。最初は年10日で、勤続年数が長くなるほど増えていき、6年半以上勤務している社員は上限の年20日となります。
原則として、有給休暇は労働者側から取得を申し出、会社側はよほどの理由がない限り、拒否することができません。
ただ、どうしても日本人の場合は「特別の理由がなければ休んではいけないのではないか」「同僚に迷惑をかけるのではないか」と休むことに二の足を踏んでしまいます。このため、日本の職場では有給休暇の取得が進んできませんでした。
もちろん、問題は会社側にもあって、というか、むしろ、そちらの方が根が深いのですが、「忙しい」「代わりの者がいない」と言って取得申請を断る会社や、「この会社には有給休暇制度などない」と豪語する会社も存在します。
そうした会社や社員の意識を強制的に変えていくのが、今回の法改正の趣旨だといってもいいでしょう。
日本マイクロソフトは4月22日、働き方改革に向け全社的な社員向けプロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ2019 夏」を実施すると発表しました。
同社によると、これによって全社員が「短い時間で働き、よく休み、よく学ぶ」ことを目指します。生産性や創造性の向上を図ります。
具体的には2019年8月はすべての金曜を休業日とし、全社員は特別有給休暇を取得、オフィスもすべてクローズします。つまり、全社員が一斉に有給休暇を取り、8月は週休3日態勢で業務を行うのです。
一方で会社は社員が休みを有意義に過ごせるよう支援します。
たとえば、自己啓発のための講座の入会料や授業料、受験料などを補助したり、他業種の職場で就業体験ができるようサポートしたりします。
家族サービスをしたい人にも家族旅行費用の補助があり、社員から家族との過ごし方のアイデアを募集し、評価されたアイデアには実現に向けた支援を行うというコンテストまで開催。もちろん、ボランティア活動をしたいという社員にも活動費や旅費・交通費などを支援します。
なぜ、ここまでするのか。
それは社員を職場に縛りつけない柔軟な働き方と適度なリフレッシュが、社員の創造性や生産性の向上につながると、会社が理解しているからです。
社員の休みを増やすには、仕事のやり方を見直す必要があり、ときには新規採用を考えなければならないこともあります。有休取得の義務化と聞いて、「そんなことはできない」とか「処罰される以上やらなければ仕方がない」と感じている企業も多いのではないでしょうか。
でも、社員を休ませるのは会社のためでもあります。もちろん、検挙されないため、という意味ではありません。生産性向上のため、社員の能力発揮のためです。
社員がリフレッシュしなければ、疲労によってかえって生産性が下がることがありますし、有能な社員ほど効率的に仕事をすすめ、休みをつくり出すものです。
工夫次第で、社員を休ませることはデキますし、しっかり休むことができる社員ほど、デキる社員なのです。
休むはデキる。一度、発想を変えてみると、法改正にうまく対応できるかもしれません。
(画像は写真ACより)
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