どちらが卵かニワトリか?働き方改革とペーパーレス
2019.05.13
近年、会社の大小を問わず、総務・人事部門にとっての大きなテーマは、働き方改革とペーパーレスではないでしょうか。
実際に取り組んでいる人は既に実感しているのではないかと思いますが、この2つは大いに関係があります。
つまり、ペーパーレスを進めるには働き方改革が必要で、働き方改革を進めるのもペーパーレスが不可欠。まるで「ニワトリが先か、卵が先か」の問いのような関係にあるのです。
では、具体的にこの2つがどのように関係し、どうすれば2つをスムーズに進めていくことができるのか、考えてみましょう。
IT専門調査会社のIDC Japan(東京都千代田区)が2019年4月に発表した調査によると、働き方改革の内容によって、プリントの削減量に差がでました。これは、国内企業のプリント環境導入判断者800人のアンケート結果です。
それによると、社員が自由に働く場所を決められる働き方に取り組んでいる会社で、プリント量の削減が進んだそうです。
たとえば、オフィスで自分の席を決めず自由に場所を選べるフリーアドレスオフィスを導入した企業では、42.2%が「プリント量がマイナスになった」と回答。
オフィスの外でインターネットを通じて仕事をするテレワークを導入した企業でも、38.3%がマイナスになったと答えました。
一方、「残業時間の短縮」の効果については、42.9%の回答者が「マイナスになった」と答えたのですが、「プラスになった」という回答も多く、答えが分かれました。有給休暇取得工場やフレックスタイム制についても同様の傾向が見られたそうです。
これについて、同社は「従業員のモビリティを高める改革が、プリント量を削減する可能性がある」としています。
つまり、テレワークやフリーオフィスなど働く場所を自由に選ぶことで、プリントアウトする紙の量が削減されていくだろう、ということですね。
テレワークを推進している総務省も、テレワークの効果として生産性の向上や優秀な人材の確保・離職防止と並んで「コストの削減(ペーパーレス等)」を挙げています。
一方で、逆にペーパーレスこそが働き方改革の前提だという意見もあります。
情報・通信システムの開発・販売を手がけるダイワボウ情報システム(大阪市北区)が運営する情報サイト「スマートワーク総研」によると、テレワークなど働き方改革にとって、ペーパーレス化こそが大前提。働き方改革とペーパーレス化は「切っても切り離せない関係」なのだそうです。
よく考えてみればその通りで、「必要な資料はすべて紙で、ファイルにとじて会社の本棚にいれてある」とか「決裁文書に上司の捺印が必要だ」という状況では、自宅で仕事などできません。
結局、「会社に出てきて仕事をしよう」ということになってしまいます。
また、旧態依然とした会議のありかたも問題です。いまだに、会議といえば分厚く綴じられた資料を配付し、会議の後は議事録を作成して出席者にハンコをもらいに回るという会社が多いのではないでしょうか。
こんな会議のやり方では、会議の準備や議事録作成の手間がかかりすぎ、とうてい働き方改革は進みません。
ここで、ペーパーレスとは何か、と考えてみましょう。
ペーパーレスを、ただ単に紙の文書を電子化することだと考えている人はいないでしょうか。確かに、過去の膨大な文書類を電子化していき、古い文書を廃棄していけば、紙を減らしていくことはできるでしょう。
しかし、ペーパーレスとは新たに紙の文書を増やさないことが大切なのです。
起案書や決裁文書、会議資料に会議録。すべて、電子化し、ついでに捺印も電子化してしまえば、書類のやりとりのために会社にくる必要がなくなり、会議資料の作成のために数人がかりで分厚い資料をホッチキスで留めることもなくなるのです。
最近は、ペーパーレスのためのさまざまなシステムやツールが開発されています。
契約書や決済文書の電子化も珍しくなくなりましたし、会議資料は社内ネットで配信され、タブレットで読むことができます。
今やメモさえも電子化され、タブレットに書き込んだメモがそのまま保存されたり、紙に書いたメモが機械に読み取られて記録として蓄積されたりするようになりました。
つまり、ペーパーレスとは、情報通信技術やデジタル技術を使った業務の効率化なのです。そして、業務の効率化なくして働き方改革はありえません。
働き方改革とペーパーレスは、業務の効率化を通じて密接な関係にあります。業務の効率化による生産性向上のための両輪と言ってもいいかもしれません。
どちらが先かではなく、両方推し進めてこそ、相乗効果で効果がでてくるのだと考えるべきでしょう。
働き方改革もペーパーレスも突き詰めれば、目的は同じ。あなたの会社の働き方改革やペーパーレスは、業務の効率化につながっていますか?
画像は写真ACより
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