プチ勤務は地方活性化の救世主になるか 岩手県の試み
2019.05.10
「プチ勤務」という言葉を知っているでしょうか。1日に1時間から4時間程度、週に数日働くといった超短時間勤務のことです。
主に高年齢者や主婦向けの働き方で、家事の都合で日中働けないという人や体力に自信がないという人たちが、「早朝の1、2時間」「子供を学校に送り出してから下校するまでの4時間程度」という形で働けるようになりました。
企業側も人手不足に対応するため、勤務シフトや業務を細分化し、プチ勤務に対応するところが増えています。
さらに、このプチ勤務を地域の活性化につなげられないかと積極的に推し進めている自治体もあります。
はたして、プチ勤務はどのような効果をもたらすのか。岩手県の取り組みをみてみましょう。
2011年3月の東日本大震災で、岩手県も大きな被害を受けました。
今も復興に向けたさまざまな取り組みが続けられていますが、課題となっているのは人手不足です。復興を進めたいのに人手が足りず、十分な生産活動やサービスの提供ができないという状況に陥りつつあります。
そこで県は2016年、国の機関や地元経済団体、大学などとともに「いわてで働こう推進協議会」を設立。多くの人が働きやすい環境を整備するため、官民が協力して働き方改革を進めることにしました。
各企業それぞれが残業時間の削減や業務のIT化、育児支援などさまざまな取り組みを進めていますが、中でも県が力を入れている政策の1つが、プチ勤務の導入です。
プチ勤務の普及に向け、県は震災の被害を受けた沿岸地域を中心に、プチ勤務の勉強会を積極的に開催しています。
これは地域の企業や事業所を対象にした勉強会で、リクルートグループのジョブズリサーチセンター(東京都中央区)から講師を招き、プチ勤務の導入方法や導入事例などについて説明してもらいます。
それによると、プチ勤務のメーンターゲットになるのは、主婦と60歳以上のシニア層。
主婦は育児や家事と仕事を両立させなければならないため、勤務時間帯は限られます。シニア層は、体力的にフルタイム勤務は難しいと思っているものの仕事による社会とのつながりを求める人が多いそうです。
こうした人たちのニーズに応えるのが「プチ勤務」です。
短時間勤務者をどう仕事やシフトに組み込むのか、難しいような気もしますが、ポイントは「既存の業務の洗い出しと細分化で、短時間でできる仕事を切り出す」とのこと。
これによって、短時間なら働ける人たちの雇用を生み出すのですが、導入することによって業務効率が上がり、従業員の長時間労働の削減につながったという例もあるそうです。
プチ勤務の人たちは、具体的にどのような働き方をしているのでしょうか。厚生労働省の「実践型地域雇用創造事業」を行っていた同県久慈地域の「久慈地域雇用創造協議会」」のホームページからいくつか事例を紹介しましょう。
ちなみに、久慈地域といえば、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台ですね。
1日2時間週5日勤務というのは、特別養護老人ホームの介助補助。スタッフの補助として食事の準備や介助、見守りを行う仕事で資格は必要ありません。子育てが終わった後のことを考え、資格取得に挑戦するママもいるそうです。
1日4時間で週3日の縫製工場での仕事もあります。縫製工場といっても、ミシンを使うわけではなく、機械に布地をセットするなどの準備作業がメーン。縫製担当者もすぐに仕事が始められるので助かるでしょう。
また、1日4時間週3日の訪問看護の仕事もあります。看護師限定の求人ですが、資格があるのに家庭の事情で働けないという人には、うれしい職場でしょう。
看護師のような例外もありますが、専門知識や技能が必要のない単純作業や軽作業プチ勤務の人に担当してもらい、フルタイムの従業員は専門的な業務に集中。作業効率を上げていくというのが、大まかなイメージでしょうか。
会社にとっても、従業員にとってもメリットのある働き方だといえます。人手の確保には一定の効果がありそうです。
しかし、注意したいのが待遇面。給与水準は妥当なのか、けがや病気などのとき休暇がとれるのか、といったあたりが気になります。
その点、岩手県のような官民での取り組みは安心でしょう。
岩手県のような取り組みが今後、全国的に広がっていくのかどうか、注目です。
(画像は写真ACより)
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