過労対策の次の一手!勤務間インターバル制度とは

2019.05.09

2019年4月から始まった働き方改革では、時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務づけなど、過労対策への具体的な施策が実施されました。そして、次の対策として、おそらく近い将来に義務づけられる制度が「勤務間インターバル」です。

今回の働き方改革では「努力義務」とされましたが、どのような制度なのか、よく知らない人も多いのではないでしょうか。

今回は、EUでは既に定着している勤務間インターバル制度について解説しましょう。会社の人事担当者は、今から勉強しておいた方がいいですよ。

終業から始業まで一定時間の休息を

勤務間インターバルとは、終業から始業までの間に、十分な休憩時間を確保するための制度です。インターバルとは「間隔」のこと。つまり、勤務と勤務の間に十分な間隔を設けるということです。

たとえば、「忙しくてなかなか休みが取れない」という人の中には、通勤時間がもったいないので会社の近くにアパートを借りる人がいます。

そうした人は夜遅く仕事を終えて帰ると、シャワーを浴びて1時間程度の仮眠を取った後、会社に戻るなどという働き方をしがちです。会社の仮眠ベットで1時間ほどの休憩を取りながらほぼ徹夜するという人もいます。

昭和の猛烈社員がもてはやされた時代なら、それも美談の一つでしたが、そんな働き方をしていて健康を害したら大事です。本人や家族はつらい思いをしますし、ときには過労死に至ります。現代であれば、会社は労務管理を怠った責任を免れないでしょう。

そうした働き方を防ぐのが勤務間インターバル。具体的には終業規則で「勤務終了後から次の勤務開始まで、○時間の連続した休息時間を与える」と規定します。

間隔を何時間空けるかは決められていませんが、次に説明する国の助成金支給の基準としては「9時間以上」。既に制度が定着しているEUでは「11時間のインターバル」が義務づけられています。

国の助成金も受けられる

今回の働き方改革で、勤務間インターバルは努力義務にとどまりましたが、国は制度の定着に力をいれています。2017年からは助成金制度を設けました。

助成の対象となるのは、制度導入や範囲拡大に要した経費の一部で、新規に制度を導入する場合、間隔が9時間以上11時間未満であれば40万円、11時間以上であれば50万円を上限として補助されます。

既に制度があり、対象者の範囲拡大や時間延長を行った場合は、9時間以上11時間未満で20万円、11時間以上であれば25万円が上限です。

助成金支給には条件があり、申請にも締め切りがありますので、詳しくは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確認してください。

インターバル導入のメリットとは

厚生労働省によると、日本の企業でいち早く勤務間インターバル制度を導入したのは、本田技研工業で1970年代のことだそうです。さすが、世界のホンダですね。

ホンダの場合は全社員が対象ですが、インターバル時間は部署によって異なり、12時間から10時間。12時間のインターバルを取った結果、出社時間を過ぎても、出社時間から勤務したとみなされます。

もともとホンダは労使で適正な労働時間管理に取り組んでいて、インターバルのために出社時間を過ぎることは滅多にありません。メリハリのある働き方が全社的に浸透しているようです。

同省では制度の導入事例をホームページで紹介しています。その中から1社紹介すると、神奈川県の工業用ヒーター製造会社のスリーハイは2018年3月に制度を導入しました。インターバルは9時間です。

同社では、それまで労働時間管理は社員任せで、忙しければ残業するのが当たり前だったそうです。しかし、従業員のモチベーションを向上させるため、社会保険労務士に労働環境の改善を相談し、勤務間インターバル制度の導入を決めました。

制度の導入によって、従業員の残業に対する意識も変わり、互いに助け合って業務の効率化に取り組むようになったそうです。

まとめ:早めの制度設計を

ほとんど家に帰らず、長時間会社にいて働く社員が猛者扱いされたのも今は昔。今は、効率的に働き、リフレッシュしながら生産性の向上を図る時代です。

今は努力義務となっていますが、勤務間インターバル制度は義務化されていくのが世の中の流れ。だから、「仕方なく」ではなく、従業員が意欲を持って働けるよりよい会社にしていくために、制度の導入を積極的に検討していきましょう。

画像は写真ACより

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高野勤一
高野勤一