働き方改革で半数以上がちょっとした休憩を取れていない?

2019.02.01
働き方改革は進んでいるか

わが国では、働き方改革が進められる中で、様々な課題が浮き彫りになってきています。変化の過程で一時的な現象もあれば、解決すべき本格的な課題も浮き彫りになってきています。

2018年に江崎グリコがインターネット調査した「仕事中の休憩」調査では次のような課題が整理されています。この調査は全国の20代から50代の800名を対象にしています。

働き方改革による職場環境の変化

調査結果によれば、66.1%が、「以前より短時間で効率よく仕事をしないといけない」と感じています。「以前より忙しさが途切れず、ランチに出られないことが多い」と答えた人は26.3%、20代では33%に到達しています。

50%の人は「以前と違ってちょっとした休憩が取りにくくなった」と感じており、現状の働き方改革は、本来のワーキングフローの改革はまだ道半ばで、成果主義からくる圧迫感も感じられています。

休憩と科学

労働基準法によれば、労働時間が6時間を超えると45分、8時間を超えると60分の休憩を取らせる必要があります。そして、休憩時間は労働から解放される必要があります。「ランチに出られない」といった状況は厳密に言えば、法的にも問題ありということになります。

もう一つ大事なのが、仕事の効率や質を上げるための休憩です。様々な研究によれば、イリノイ大学の研究では、休憩中に効果があるのはリラックスと社交で、ウェッブサイトやメールの閲覧はかえって疲労を溜めてしまいます。完全にスイッチを切ることが大事です。

ベイラー大学の調査によれば、朝や午前中の休憩は午後の休憩より効果があり、短くても頻繁に休憩を取ることが効果的だそうです。トロント大学の研究によれば、オフィスに留まるより、オフィスから外に出ることも疲労度を抑える効果もあるそうです。

休憩の実態

グリコの調査によれば、約6割の方が仕事中の休憩ができていないと答えています。仕事中のちょっとした休憩に求めるものは、「気分転換」「ひといきつくこと」「頭をスッキリさせること」です。

休憩を取ることによって、「リラックスできた」「眠気が覚めた」「集中力が高まった」とも答えており、適切な休憩が仕事の効率を上げることが推測されます。

ランチミーティングの弊害

最近話題になってきたのが、ランチミーティングです。残業時間を削減するための手段として、ランチミーティングが増えているようです。

意見としては、「楽しいランチとは思えない」「気を使わないといけないので、面倒」「飲み会よりましだけど、ランチミーティングも無駄」というように、後ろ向きの答えが多いようです。

前述の研究に従えば、仕事の効率を下げるだけの休憩になってしまいます。また、法的にも問題の残る休憩と言えます。

働き方改革を改悪に繫げないために

働き方改革を進める上では、業務の効率化と従業員のワークライフバランスを調和させる必要があります。マネージメントレベルではそれなりに理解しているのでしょうが、それが現場に降りた時に、整合性がとれていなければなりません。

スローガンだけの働き方改革ではなくて、業務フローの見直しや、役割分担の明確化、無駄な仕事の排除、評価基準の明確化など根本的な仕事の流れを整理・整頓する必要があります。

このような抜本的な対策を行わず、従業員に全てを丸投げすると、タイムカードの虚偽申告や、持ち帰り仕事の増加など、将来に禍根を残すことになります。

今回は「休憩」という普段あまり表に出ないテーマを取り上げましたが、よい意味で休憩が仕事の成果に繫がる業務環境を構築していくことが、働き方改革推進として大事になってきます。

記事をシェアする

高野勤一
高野勤一