第二の定年?65歳「シニア正社員制度」

2019.02.01
シニア正社員制度とは

最近、シニアを活用する「シニア正社員制度」といった考え方を導入する企業が増えてきました。

以前から、60歳定年を迎えた人材を65歳まで継続雇用する制度は、多くの企業で採用されていますが、基本的には正社員ではなく、契約社員などの位置付けで、年次更新で65歳までの雇用を継続するパターンが多くなっています。

住友商事グループのSIerであるSCSK社の「シニア正社員制度」は、60歳で定年を迎えた人材を対象に、65歳を第二の定年とした正社員雇用制度を打ち出しました。従来の再雇用制度をよりバージョンアップしたものとなっています。

その背景にはIT業界における人材確保が難しくなってきたこと、高度のスキルを持った人材が今後大量に定年を迎えることに対する企業の危機感が、この新たな制度に結実しています。

シニア正社員制度の特徴

SCSKのシニア正社員制度は、2013年に導入された「実年キャリアプラン」で65歳までの完全雇用の実現を受けて、2018年7月に導入されました。

シニア正社員制度では、60歳以降を1年毎の延長ではなく、65歳を定年とした長期の雇用契約にすることにしました。

SCSKでは、シニア正社員を50代前半からキャリアプラン化し、継続雇用を選択した人は選択したコースに従った人事制度が適用されます。

長期的なキャリアプランが組まれるので、従業員にとっては長期的な視野で、安心な制度になりました。

報酬面でも対応

原則はフルタイム勤務として、必要に応じて短時間勤務なども認めます。給与は基本給に加えて、残業手当20時間に該当する「健康手当」を支給します。

さらに、四半期毎に期待役割のグレードに応じた「グレード加算給」、年度毎に社内認定制度により認定した専門性レベルに応じた「専門性認定手当」が支給されます。

収入面でも貢献度が認められれば、現役社員と同様に大幅なボーナスが支給され、報酬のアップも可能にしました。

安定した雇用に加えて、スキルアップの可能性を持った制度になっており、報酬面でも手厚くなっています。

長期雇用に向けた制度

SCSKに代表される長期雇用への取り組みは、様々な業界の企業に拡がりつつあります。

クレジットカード会社のジャックスは最長70歳まで働ける「エルダー社員制度」を創設しました。同社では65歳まで契約雇用している社員を業務遂行度や健康度合いを元に、1年毎の契約を行い、70までの雇用を実現しています。

化粧品会社のファンケルも65歳以降の雇用を「アクティブシニア社員」として実現しています。ファンケルでは、対象者を広く、嘱託社員、契約社員、パート社員まで拡げて、この制度を運営しています。

パチンコ業界のダイナムは定年を65歳まで延長する「シニア社員制度」に加えて、70歳までの再雇用制度を充実し、年金受給年齢の引き上げに対応した、制度づくりを進めています。

人材の確保とノウハウの継続

日本の生産人口は2029年に7000万人、2040年に6000万人と減少することが予測されています。このような環境の中、成長度合いは少ないものの、戦後最長の成長期にある日本企業、そして日本経済にとって、質的にも量的にも人材の確保が緊迫の課題となっています。

厚生労働省の雇用政策研究会でも人口減少、社会構造変化の中で、女性の活躍推進、外国人材の活用、様々な事情を抱える人の活躍支援に加えて、長寿化に対応した高齢者の活躍推進が重要であると結論付けています。

今後も、SCSKのような雇用政策が日本企業に増えてくると思われます。また、年金政策的にも高齢者雇用が重要になってきます。

(画像はイメージです)

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高野勤一
高野勤一