給料を本人以外の口座に振り込むことは可能?気をつけるべき点とは
2017.11.02
給料というものは、基本的に社員本人の口座に振り込まれるものですよね。しかし、場合によっては本人以外の口座に給料を振り込むケースもあります。
たとえば、社員が失踪してしまい、連絡がつかない場合。この時点で未払いの給料がある場合、会社側にはきちんと残りの給料を支払う義務があります。この時、本人の代理として家族の口座に振り込むことは問題ないのでしょうか?
労働基準法では、以下のように定められています。
まず、労働基準法では、賃金の支払いは通貨で行うことが定められています。本人名義の口座に給料を支払うことで、通貨払いという条件を満たしていることになるわけです。
また、労働基準法第24条では直接払いの原則というものが定められているため、配偶者や家族など、本人以外の口座に賃金を振り込むことは労働基準法違反ということになります。
しかし、これについては例外として、本人が病気などの理由によって直接賃金を受け取ることができない場合のみ認められています。
先ほどの例外では、本人の意思によって代理人を立てることで、本人以外に賃金を支払うことが合法とされていました。
しかし、社員が失踪してしまうなどして連絡を取れなくなってしまった場合、本人の意思で代理人を立てることは不可能です。こうなると、たとえ親族や配偶者であっても、代理で給料を支払うことはできません。
すでに支払いが済んでいる場合はよいですが、未払い分がある場合や、本人名義の口座がすでに解約されている場合には、どのように対処するべきなのでしょうか?
本人以外の人間であっても支払いが許される条件は限られています。それは、本人が使者を立ててきた場合です。
使者とは、病気などによって本人が会社に来られない事情があること、電話などによって、妻や親など、本人の意思で使者を立てることが確認できること、使者選任届を持っていること、この3つの条件を満たす人を言います。
これに1つでも当てはまらない人は使者とは認められないため、給料を支払うことは法律で禁じられていますし、支払ったところで本人から給料支払いの請求があれば、応じなければなりません。
ですから、たとえ親族が委任状を持ってきても、給与を支払ってはいけないのです。
では、本人と連絡が取れず、使者を立てることもなかった場合は、一体残りの給料はどうすればよいのでしょうか?支払わないということはできませんから、方法は2つに別れます。
1つは、時候が来るまで、会社で保管しておくという方法です。賃金債権の請求は2年間有効で、それ以降は消失するため、本人が現れるまで、または2年が経過するまで会社で給料を保管しておかなければなりません。
もう1つの方法は、法務局と供託するというものです。
供託というのは、供託者(ここでは会社)が金銭などの供託物を国家機関に供託所として預け、管理を委ねるというもの。そして、供託所を通して債権者(ここでは社員)などに供託物を取得させることで、会社は賃金を支払うという目的を法律上果たすことができる、というわけです。
社員が行方不明になるなどして連絡が取れず、給料の支払いができない場合には、労務局などに給料を預けることで支払債務を免れる、弁済供託というものが利用できます。
会社でお金を保管し続けるというのは大きな負担になりますし、社員の親族などが委任状を持って現れると、給料を支払わなければならないと思ってしまいがちですが、3つの条件に当てはまる使者以外には支払うことはできない、と覚えておくとよいでしょう。
(画像はPixabayより)
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