会社の経費を私的流用したら?その罰則について

2017.11.01
経費の流用は犯罪

会社の経費を私的な理由で使ってしまうことは犯罪です。たとえば社員同士の飲み会や借金の返済などですね。

このような理由で会社のお金を使うことが犯罪に当たることは、考えれば分かりそうなものですが、実際にはよく起こっている犯罪でもあります。

では、うっかり会社の経費に手を付けてしまったら、どのような罰を受けることになるのでしょうか。

経費の私的流用に関する罰則

会社のお金手に手を付けてしまう行為は、大きく言うと「横領罪」というものに分類されます。横領罪とは、自分が占有しているものの中で、他人の金品を自分のものにしてしまうという罪です。

ただし、横領罪にも「単純横領罪」と「業務上横領罪」の2種類があり、どちらに分類されるかによって罪の重さも変わってきます。

まず、単純横領罪の場合は、自分が占有する他人のものを横取り(横領)した場合に当てはまり、5年以下の懲役という罰則が設けられています。これは、他人から借りていたものを返さないまま音信不通になったり、第三者に売り払ってしまったりすると適用されます。

次に、ニュースなどでも取り扱われることの多い業務上横領罪について見てきましょう。こちらの場合は、自分が占有する他人のものを横取りする点は同じですが、業務上という条件が付け加えられます。

業務上横領罪の場合は、単純横領罪よりさらに重い、10年以下の懲役とされています。たとえば、会社の会計係が、売上金などを操作して、自分の懐に入れている場合などがこれに当たります。

業務上横領罪の場合は、犯罪行為が繰り返し行われていることも多く、発覚した時には被害額が数千万単位に膨らんでいるため、返済が難しい点も特徴です。

繰り返し行われるパターンが多く、返済が難しい額にまで被害額が膨らんでいることが多いため、実刑判決が多い犯罪と言えるでしょう。

罪に対する罰則

このように、横領罪は犯罪が発覚しても返済できないことも多く、罰則としても罰金ではなく懲役という、かなり重い罪が設けられています。

しかし、万が一社員からこのような犯罪者が出てしまった場合、必要なのは刑事上の問題だけではありません。流用したお金を返してもらったり、会社としてどのように扱っていくかであったりと、様々な問題が生じます。

まず、横領されたお金に関しては、本人の手元にお金がなければ返してもらうことはできません。こうした場合、裁判に勝訴した上で、財産の仮押さえなどの、強制執行手続きを行うことができます。

また、被害額を取り戻せたとしても、それだけで終わりにはなりません。罪を犯した社員に対しては、懲戒解雇という処分を下すことができますが、これにはきちんと手順を踏むことが必要です。

もしも懲戒解雇する場合には、就業規則に懲戒解雇に関する記載がされていることが必要ですし、解雇する場合にも、就業規則に則った手続きが必要となります。

就業規則に記載がなく、即時解雇したい場合には、書面にて即時解雇の合意を得ることが必要です。どちらにしても、就業規則に懲戒解雇について書かれているかどうか、事前に確認しておくとよいでしょう。

給料の支払いは必要

横領をした社員に対して給料を支払うということには抵抗があると思いますが、原則として、働いた分の給料は支払う義務があります。

ただし、社員が横領した分の金額を差し引き、相殺することで、給料の支払いをなしにすることは可能です。そうした方法を採る場合には、やはり書面で合意を求めましょう。

また、これは退職金についても同様です。就業規則によって退職時の退職金を支払う制度が敷かれている会社ならば、たとえ罪を犯した社員であっても、退職金を支払う義務があります。

ただし、就業規則に懲戒解雇などの場合には退職金の支払いをしない、などと明記されている場合は支払いの必要がありません。

仮に退職金を支払う必要がある場合でも、給料同様、書面によって合意を得れば、横領された金額との相殺によって支払いをなしにすることは可能です。

横領が発覚した場合、解雇や給料、退職金の支払いなどについては、就業規則に記載されているかどうかで対応が変わります。事件が起こる前に、自分の会社ではどのような規則になっているのか把握しておくことが重要と言えるでしょう。

犯罪という意識の低さ

横領罪は、故意に行うものばかりでなく、無自覚でやってしまう危険性も高い犯罪です。

たとえば、会社のプロジェクトの経費が余ったからチームで飲みに行き、そのお金を経費として提出。支給されたお金を自分のポケットマネーにしてしまうと犯罪になります。

また、接待費として支給されていたお金を、仲間内だけでの飲み会に使うのも横領に当たります。こうしたことは犯罪という意識もなく、うっかりやってしまいがちですから注意が必要です。

(画像はPixabayより)

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橋本宏子
橋本宏子